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清水哲男の薩摩農園コラム - 社長がゆく!!Vol5
社長がゆく連載

- 「売ったらあかん」 -Vol.5
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舟橋が育てた名古屋コーチンと黒豚を、実際に食べた。
とあるちゃんこ料理店に彼が豚肉と鶏肉を持ち込み、いっしょに焼酎を飲んだ。
鹿児島では薩摩地鶏と呼び、地鶏の刺身をよく食べる。
薩摩地鶏は肉がかたくしまり歯ごたえがある。脂は白っぽく、少々しつこい。これを甘い醤油とニンニク、あるいは生姜で食べると焼酎によくあうのだ。
名古屋コーチンの胸肉ともも肉を刺身で生姜醤油で食べた。
薩摩地鶏と比べるとはるかに柔らかい。脂は黄味がかり、見た目にはしつこそうに見えるが、口に入れるとすっととけてゆく。
味も、かたさに気をとられ醤油の味ばかりが残る薩摩地鶏とはちがい、濃厚でコクのある味がする。
黒豚はロースだ。
これは味噌仕立てのちゃんこ鍋に入れて食べた。
思い描いていたより肉の色は赤い。脂身は、ほぼ真っ白だ。私がそれまで見知っていた黒豚のロースと言われるものは、肉はやや刺しの入ったピンク色で、脂身もそんなにしっかりとはしていなかった。
「うちの豚は無菌やから、ほとんど生でも食えるよ」
舟橋に言葉に促されて、さっと鍋の出汁をくぐらせるだけで口に運んだ。
柔らかいしほどよい弾力がある。歯切れもいい。それに、何とも言えない甘みがある。
脂身もまったく嫌味がなく、さっぱりとしている。口にひろがる甘さは、この脂身のせいかもしれない。
もともとこれが黒豚だと出されても、普通の豚肉とあまり区別はつかなかった。
しかし、舟橋の黒豚を、これがそうだと出されたら、はっきりちがいがわかる。
それが放牧のせいなのか、飼料のせいなのかわからないが、そこらでお目にかかる黒豚とはあきらかにちがうのだ。
うまい鶏と豚を、舟橋の話を聞きながら食べる。40数年前の若かりし頃の話。
会議で居眠りをしていて上司にとがめられた。「眠たい会議だから仕方ないでしょ」と応えた。
営業成績はトップだった、が、物が売れなかった。売れない理由を問われ、「売れる物をつくってないから売れないんだ」と言い放った。あげく上司を殴って辞めた。一部上場の企業だった。
しかし、彼が辞めてから数年でつぶれた。
久しぶりに再会した当時の役員に「お前がいたら、会社もつぶれなかった…」と嘆かせた。
「媚びを売ったらあかん」舟橋は言った。
「とくにトップに立つ人間は媚びを売ったらあかんのや。トップに立つ人間はカリスマでないと人はついていかん」と。
40数年前、就職したばかりの若い舟橋は、すでにそんなことを考えていたのだ。
「媚びを売るな」という言葉は、以来実践されている。
だから、冷間圧造メーカーの三豊機工は大企業の系列には属さないし、名古屋コーチンも黒豚も、売るための広告をしない。
「大切に育てること、うまい肉、うまい卵は、売らんでも売れるわ」
舟橋は笑いながらうまそうにグラスを空けた。
- 2007年9月 作家:清水 哲男 - 社長がゆく!! vol.5
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