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清水哲男の薩摩農園コラム - 社長がゆく!!Vol1
社長がゆく連載

- 「不思議な社長の不思議な会社」 -Vol.1
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「一代でここまで大きくされて、すごいですね」
「俺は、大きいとも思っとらんし、すごいとも思っとらんわ」老人は不機嫌そうに笑った。
およそ社長というものは、
自社の実績、優秀性を声高に説き、少しでも社業を大きく見せようという意識の持ち主だと思っていた。 しかも、一代で会社を大きくしたという人物にかぎってそんな人が多い、と。
「続けてきおったら、こうなったんや」
三河弁の言葉の裏には、自分はそんな野暮な経営者ではないという思いがみてとれた。
三豊機工(株)社長舟橋宜孝。
彼は、私がそれまでに出会ってきた社長、経営者と呼ばれる人々とは、まったくちがった。 実は、社長、経営者と話をするのが苦手だった。
経営哲学というものを聞かされるのが苦痛だったのだ。ほとんどの経営者が「哲学」と呼ぶのは、言葉をわかったような言葉で説明する、言葉の羅列にすぎなかった。
現実から浮き足立った言葉の組み合わせで、行間からはその会社が何をしてきたのか、いまある姿はどうなのか、これから何をしようとしているのかが伝わってこない。
さらに言葉をかみ砕いてみると、まったくの意味不明なのだ。
そんな虚しさを味わいながら話を聞くことが多かった。だが、舟橋はちがった。
「会社が大きいか小さいか、成功したかどうか、そんなことはどうでもええ。
いまある以上でも以下でもありゃあせん。口で説明せんでも、見たらわかるやろ」。
目の前の老人はそう言い放つと豪快に笑った。
いささか乱暴な、人を煙に巻くような話だ。
つまらぬことをたずねると、お前の目は節穴かというふうに私をじろっと見る。
話を聞く側にとっては、とても厄介な相手だ。が、話していて実に楽しい。
この会社はもともと彼が大手商社と組んで、冷間圧造工具の販売をはじめたことにはじまる。
40年前のことだ。その後製造も手がけるようになり、世界的なボルト・ナット用冷間圧造工具メーカーとしての道を歩んできた。そして本拠としていた愛知県に加え、鹿児島県川辺町に工場をつくった。
「会社を大きうするとか、もうけるてなんか、言うたことない。いつやめようかなと思とったくらいや。1人ではじめた会社けど、2、3年たったら4、5人、10年たったら2、30人。そのうちやめられんようになった」
一方ここ数年、まったく畑ちがいの黒豚の放牧養豚や名古屋コーチンの平飼い養鶏にも手をひろげている。
不思議な社長の不思議な会社だ、と思った。
大きくもしないし、もうけもめざさない。ではいったい彼は何を考え、何を支えにここまできたのか、これからどこに進もうとしているのか。疑問がよぎった。
その時だ、舟橋は私のつまらない疑問など吹き飛ばしてしまうかのように笑いながら言った。
「満足なんかしとりゃあせんでぇ」
- 2007年9月 作家:清水 哲男 - 社長がゆく!! vol.1
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